- 法人での資産運用はそもそも必要なのか知りたい
- 法人での資産運用で注意すべきポイントが知りたい
- 法人での資産運用が成功するための運用戦略が知りたい
経営者の中には、会社の経営資金を資産運用で増やすことを躊躇する人も多いだろう。
誰しも、投資による暴落で大切な経営資金が目減りする可能性を考えてしまうはずだ。
しかし、近年の低金利を考えると、少しずつ資産形成が期待できる資産運用は、法人にとって必要性が高くなってきている。
この記事では、法人で資産運用をするメリットやデメリットを詳しく解説する。
資産運用で注意しておきたいポイントや、おすすめの投資先も紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
会社での資金運用は必要?メリット・デメリットを解説

会社の経営資金を資産運用に利用するためには、メリットやデメリットを理解しておく必要がある。
法人に資産運用が必要な理由や、注意しておきたいポイントを紹介するので、ぜひ確認しておいてほしい。
法人の資産運用は必要性が高い
法人にが資産運用を行う必要性は、非常に高い。
法人は営業利益だけで会社を拡大していくのではなく、余剰金も効率的に活用し、経営の安定性を高めることが求められる。
特に、景気の変動や予期せぬ事態に備えるリスク管理として、資産運用は有効な手段となる。
近年の低金利環境では、銀行預金だけで余剰資金を大きく増やすことは難しい。
そのため、資産運用を通じて資金を増やすことが、企業の成長に繋がる。また、適切な運用を行うことで、節税効果も期待できる。
以上を踏まえ、眠っている余剰金がある法人は、積極的に資産運用を検討し、自社の成長と安定経営を目指すべきである。
法人が資産運用をするときのメリット
法人が資産運用するときの大きなメリットは3つ挙げられる。
- 事業とは別の収入源を生み出し、収益性が向上する
- 収益をもとにした経営体制の強化が可能となる
- 法人が負担すべき税金を軽減できる可能性がある
資産運用によって得られる利息や配当などは、事業とは異なる収入となり、将来にわたって経営を強化して安定した事業が可能となる。
仮に、資産運用により損失が出た場合には、事業利益と損益通算が可能だ。損益繰越となったときには、税金の負担を軽減できるようになる。
資産運用をしていなければ、損益通算や事業外の収入もないため、他のリスク管理を検討しておかなければならない。
法人が資産運用をするときのデメリット
法人で資産運用をしたときのデメリットには、以下の3つが挙げられる。
- 市場変動に左右され、資産が目減りする可能性がある
- 運用管理やコストによって収益性が下がる可能性がある
- 事業資金が必要になったときすぐに現金化できない可能性がある
法人・個人問わず、資産運用は市場の変動が影響して、投資した金額と同じ金額を回収できなくなってしまうリスクがある。
運用結果で損失が出てしまったり、運用管理でコストがかかってしまったりなどで、収益性が下がることも考えられる。
なお、法人がおこなった資産運用で得た利益は、すぐに換金できない場合がある。
現物投資の場合、換金時期によっては損失となることを知りながら、資金集めから換金を余儀なくされるケースもある。
法人が資産運用するときは、余剰金を投資に充てることが重要だ。経営リスクへ備えるための資金すべてを、資産運用に充てることは避けておきたい。
法人の資産運用で成功するための戦略

法人の資産運用では、3つの戦略が成功に繋がると考えられる。
- 長期視点で運用計画を立てる
- 分散投資でリスクを軽減する
- 定期的なリバランス
それぞれ、詳しく解説するので参考にしてほしい。
長期視点で運用計画を立てる
資産運用は、長期視点で将来予測しながら戦略を立てる必要がある。
将来の目的を明確にし、中長期的に安定した収入を確保するためには、短期で大きくリターンを得る必要はない。
経営資金として考える資産が、不明瞭すぎるものであっては、不安を抱えたまま事業を継続することになる。
しかし、将来の目的に合わせた低いリスクとリターンなら、時間の経過とともに見直しができる可能性もある。
もし、短期視点で運用してしまうと、見直す間もなく資産を失くしてしまう恐れもあるので注意が必要だ。
分散投資でリスクを軽減する
個人だけでなく、法人で資産運用するときも、分散投資を心掛けておかなくてはならない。
市場は、上昇と下落を繰り返すものだ。もし、同じ値動きの金融商品に資産をすべて投資していたら、どうなるだろうか。もちろん、下落すれば大きな損失となるだろう。
しかし、違う値動きをする金融資産を選んで投資していれば、1つは下落しても片方が値上がりし、損失を防いだり軽減したりできるようになる。
資産投資によるリスクへの備えを考えるなら、分散投資は必ずといって必要なことだといえるだろう。
定期的にリバランスを実施する
資産運用におけるリバランスとは、資産の分配比率を見直すことだ。運用実績に応じて、投資先を変更することが必要になる。
たとえば、50%ずつ株式投資と海外の債券に投資していた場合、1年経過後、株式投資で20%上昇、海外の債券が20%下落した場合、元々のバランスが崩れることになる。
その際には、株式投資と海外債券のリバランスを実施し、投資割合を5:5に戻すとよい。
ただし、投資への知識を持たず、安易にリバランスすると、更に1年経過したときにリバランスが上手くいかず、損失を被る可能性もある。
定期的な投資先の見直しは、専門家の意見も取り入れながら検討した方が良いと言えるだろう。
法人の資産運用におすすめの投資先7選

資産運用で投資する際、リスクやリターンを考えながら投資先を決めることが大切だ。
ここでは、法人におすすめの投資先を7選に分けて紹介する。
- 債券投資
- 投資信託
- 不動産投資
- リース投資
- 株式投資
- 現物投資
- 生命保険・損害保険
それぞれ詳しく解説するので、経営戦略や事業リスクに備えて、必要な投資先を見つけてほしい。
債券投資
債券とは、国や企業が資金の融資を受けるときに発行されるものだ。定期的に利息を受け取れ、償還期限(満期)が来ると元金が返還される。
発行元がデフォルトする可能性はあまり高くない。そのため、債券投資はローリスク・ローリターンだ。
しかし、安定を求める長期の資産運用には欠かせない投資先だと言えるだろう。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から資金を集め、運用の専門家が株式や債券などの様々な金融商品に分散投資する金融商品だ。
投資する先によってリスク度合いは異なるため、ハイリスク・ハイリターンの銘柄からローリスク・ローリターンの銘柄まで揃っている。
プロに運用を任せられるため、専門的な知識がなくても資産運用が可能となる。
不動産投資
不動産投資では、初期投資で高額な費用が必要となるが、長期的に見ると、家賃収入などにより安定した収益が見込める。
また、資産価値の面からも、長期の資産投資には役立つ投資先の1つだと言えるだろう。
オフィスビルや商業施設は、法人向けの不動産投資として数多く取り扱われている。
ただし、資産管理にコストがかかりすぎる可能性もあるため、十分な戦略が必要になると考えられる。
リース投資
法人の資産運用で用いられるリース投資は、安定した収益が見込まれる特徴がある。
リースの対象となる資産は、減価償却の対象にもなるため、税制面でも有利だと言えるだろう。
資産をリースするため、固定化によるコストがかからず、金利変動のリスクを回避しやすい。
また、リース投資とはいえ、資産であることには違いないため、資金調達力の増強にも役立つだろう。
株式投資
株式投資とは、企業が発行する株式を購入し、その企業の所有者の一部となることで利益を得ようとする投資活動だ。
株式投資の主なメリットは、以下の2つである。
- キャピタルゲイン(値上がり益)
- 株価が上昇した際に株式を売却することで得られる利益
- インカムゲイン(配当金)
- 企業が利益の一部を株主に還元する形で支払われる
株式投資の注意点は、株価は市場の需要と供給、企業業績、経済状況などにより変動し、損失が発生する可能性がある。
また、 最悪の場合、投資した企業が倒産し、株式価値がゼロになる可能性があることだ。
株式投資は価格変動が大きいため、1社に集中投資をすれば、その会社の株価が暴落した場合、大きな損失を抱えることとなる。
そのため、値動きの異なった株式に分散投資をする必要がある。
現物投資
現物投資は、金やプラチナなど、株式や債券とは反対の値動きとなりやすい投資先だ。
法人の資産運用におけるリスクマネジメントの1つとして、検討してみることをおすすめする。
金やプラチナは、すでに埋蔵量が決まっている。そのため価値がゼロになる可能性は低い。
安全資産と呼ばれる金などは、リスクに対する資産として、需要が高まりやすい特徴があるのだ。
株式や債券投資だけでなく、市場の暴落に備えた現物投資も余力があれば考えておくと良いだろう。
生命保険・損害保険
企業のリスクマネジメントの1つとして、保険を対象にした投資方法もある。支払った保険料は損金算入できる種類も多く、従業員の福利厚生や事業承継への備えにも役立つ投資だ。
ただし、法人向けの保険は数多くあり、ニーズに合わせて選ぶことが重要となる。
解約返戻金をもとに資産形成する場合、タイミングを逃すと大きく資産が目減りしてしまう危険性がある。
人材不足の近年、雇用促進のために福利厚生を充実させようと、保険を活用する企業も増えている。
しかし、保険は加入のし直しができないため、信頼できる専門家に相談したうえで検討することが重要だ。
法人運用で気をつけるべきポイント

投資で法人運用する際の注意ポイントは主に3つだ。
- 流動性のある投資商品
- 過剰投資を避ける
- 税務や法務面で確認を怠らない
それぞれ詳しく解説していく。
流動性のある投資商品
法人投資では、換金性の良い投資商品を選ぶことが大切だ。
投資において、いつでも換金できる投資商品を「流動性が高い」という。現金が必要になったときにすぐに対応できるように、流動性の高い商品に投資をしておくことがおすすめだ。
売却しにくいものや、一定の時期しか売却できない投資商品は、資金を必要とするタイミングで換金できない可能性がある。
そのため、法人の資産運用には、流動性の高い株式や債権、投資信託やREITなどの検討が必要だ。
過剰投資のリスク
法人の投資は、余剰資金で行うことが大切だが、資金があるからといって、過剰な投資は禁物だ。
投資商品や投資の割合によっては、思わぬ下落で大きな損失を被る可能性がある。そのため、余剰資金であっても、一定の資産を確保した上での投資が重要だ。
法人における余剰資金は、万が一に備えた事業継続の資金となる。そのため、法人の投資にはリスクマネジメントは必要不可欠である。
税務と経理面の確認
投資で得た利益は、事業の課税所得と合算されて課税される。
個人の特定口座なら、一律の分離課税20.315%だが、法人になると21%〜34%と高い税率だ。
投資による損失が起きたときは、事業所得と損益通算できるメリットもある。
会社資金を運用するときはプロに相談しよう

法人が事業資金を使って資産運用するときは、プロへの相談がおすすめだ。
資産運用のプロに相談できる窓口は複数あるため、ニーズにあった相談先を見つけよう。
ここでは、プロに相談するメリットと、相談できる窓口を紹介する。
資産運用をプロに相談するメリット
市場取引は常に続いており、投資先の成果はその都度変動する。また、資産運用では、先を見越した予測が必要不可欠だ。
資産運用のプロに相談すると、ニーズに合う投資先をアドバイスしてもらえる。また、運用を任せる信頼できる機関を紹介してくれるメリットがある。
法人の資産投資に欠かせない、分散投資や流動性の高い投資商品を提案してくれるので、選択ミスも防げるだろう。
相談先
資産運用について相談できる窓口は主に3つだ。
相談窓口 | 特徴 |
---|---|
銀行 | 取り扱う投資商品が少ない |
証券会社 | 取り扱う投資商品が多い 投資のプロフェッショナル集団 |
IFA | 資産運用の専門家とマッチングできる 経験豊富なIFAに相談できる |
法人の資産運用には、豊富な経験と知識を持つプロに相談することが大切だ。
証券会社は、投資に精通したプロフェッショナルな集団だと言えるだろう。また、資産運用の相談ならIFAもおすすめだ。
IFAは、独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれており、特定の銀行や証券会社に属していない資産運用のプロだ。
経験が豊富なIFAなら、運用の知識も豊富に持ちつつ中立な立場でアドバイスしてくれるので、安心して相談できるメリットがある。
法人での資産運用はプロに相談しながら始めよう

将来に向けて経営資金を準備するための資産運用は、法人にとって大切な事業リスク対策だ。
低金利が続く近年、銀行に預け入れているだけでは、資産の増加は期待できない。経営を支える法人だからこそ、資産運用が重要だと考えられる。
ただし、資産運用には余剰金を活用し、正しい運用戦略を立てることが大切だ。
資産運用を始めるときは、プロに相談したうえで、慎重に投資先を選ぶことも忘れてはならない。