- 60代が新NISAで運用するべき理由を教えてほしい
- 60代が新NISAで運用するときのおすすめ方法を教えてほしい
- 60代は新NISAで毎月いくら積立投資すべきか教えてほしい
60歳や65歳で定年を迎え、老後のために投資を始める人も少なくないだろう。
老後に備えた預貯金や、退職金の減りを遅らせたいのであれば、運用益を非課税で受け取れる新NISAでの投資方法がおすすめだ。
ただし運用に際しては、月々の運用額やどのような商品を選ぶかで、リスクやリターンが大きく変わる点には注意してほしい。
本記事では、60代からの資産運用に新NISAを活用すべき理由や、月々の積立額に応じた運用例を解説する。
資産を守りながら運用したい、損益はなるべく小さく防ぎたい方は、ぜひ参考にしてみてほしい。
60歳は遅い?いまからでも新NISAを始めるべき理由

60歳から資産運用を検討している人は、ぜひ新NISAをおすすめしたい。
以下で、その理由を解説しよう。
資産運用で老後資金の減りを遅らせるため
老後資金のための新NISAでの運用は、60代から始めても遅くはない。
むしろ60歳以降に、より安定した老後生活を送るための財政基盤を形成するのに向いている方法だ。
たとえば老後資金として準備した預貯金や退職金、月々の年金だけでは、その先数十年の生活資金が不足してしまう可能性がある。
定年退職後の旅行や趣味、家のリフォームなどを予定していればなおさらだ。
60歳、65歳から始める資産運用は大きくリターンを得るのではなく「資産の寿命」を延ばし、老後資金が底尽きてしまうリスクを軽減するべく行うのが目的である。
退職金運用には積立投資が適しているため
退職金を元手に資産運用を始める人には、積立投資がおすすめだ。
いきなり多額のまとまった資金が入るため「個別株に投資した方がいいのではないか」と考える人もいるだろう。
しかし老後資産を守るためには、リスクを抑えつつ着実にリターンを狙う、積立投資が適している。
2024年に非課税保有限度額が1,800万円に拡大された新NISAでは、一度に投資するのではなく、定期的に一定額を積立することで、市場の上昇・下落に左右されにくい運用が叶う。
月々の定額投資であれば、一気に数百万といった資金が出ていくよりも心理的負担が軽く、リスク回避をしながら複利効果が得られる。
積立投資の中でも、運用益を非課税で受け取れる新NISAが良いだろう。
60代からでも非課税効果を十分に受けられるため
冒頭で、60代での新NISA運用は遅くないと述べたが、今からでも十分に新NISAの非課税効果を享受できる。
日本人の平均寿命は2023年時点で、女性が87.14歳で男性が81.09歳と、年々伸びている長寿社会の日本においては、定年退職以降の運用期間が長期化している。
就労年数もまた延びており、希望すれば65歳までの雇用や、それ以降の勤務が可能な企業もあり収入を得ながらの資産運用も可能だ。
2024年からの新NISA制度では、非課税保有期間が無期限となったため90歳まで生きるとすると、20年以上の運用期間がある。
複利効果で将来資金の目減りを遅らせながら、非課税効果を受けられると、老後の生活にも余裕が生まれるのではないだろうか。
60代は新NISAのつみたて投資枠から始めよう

60代で新NISAを始めるなら、つみたて投資枠から始めることをおすすめする。
まずは概要と詳しい理由を解説する。
つみたて投資枠の概要
新NISAのつみたて投資枠の概要は、以下の表にまとめてある。
非課税保有期間 | 無制限 |
---|---|
口座開設期間 | 恒久化 |
年間投資枠 | 120万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円 |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁が定めた基準を満たすもの) |
対象年齢 | 18歳以上 |
新NISAの対象となる投資信託は、信託報酬が一定水準以下のものに限られており、分配金・配当金や売却益が非課税である。
つみたて投資枠は年間120万円まで、積立商品を購入可能とされているため、毎月の上限額が10万円となる。
毎月10万円の投資で、1,800万円の保有限度額を迎えるまでは自動的に継続投資ができ、複利効果が得られ続けるという仕組みだ。
つみたて投資枠を活用すべき理由
60代の資産運用でつみたて投資枠の活用をすべき理由は、「長期・分散・積立」を兼ね備えているからに他ならない。
「長期・分散・積立」とは、世界的にも資産運用の王道とされるスタイルで、長い目で老後資金の目減りを防ぎたい人にはぴったりの方法だ。
つみたて投資枠で扱っている商品は、金融庁から認められた投資信託やETFなど、長期・分散投資に適した商品に限られている。
さらには「ノーロード」と呼ばれる、販売手数料がかからない投資信託のみを扱っている上、信託報酬は低水準だ。
月々の積立金額に関しては、毎月1万円や3万円など少額から始めることが可能なため、初心者がリスク軽減しながら長期的な資産形成をするのに向いている。
つみたて投資枠でおすすめの商品
つみたて投資枠で資産運用を始めるなら、金融庁の基準を満たした一定の投資信託とETFが投資対象である。
2024年10月の時点で、つみたて投資枠の対象商品は全部で301本もあり、内訳は以下の表にある。
国内 | 内外 | 海外 | ||
---|---|---|---|---|
公募投信 | 株式型 | 56本 | 30本 | 80本 |
資産複合型 | 5本 | 120本 | 2本 | |
ETF | 3本 | ー | 5本 |
301本のうち、インデックス型投資信託ともいわれる株式型が、リスクを分散しながら安定したリターンを目指したい人にはおすすめだ。
例をあげていくつか紹介しよう。
日経平均インデックス
日経平均株価(日経225)や東証株価指数などの、国内の株式市場の値動きを表す代表的な指数(インデックス)に連動した運用結果を目指した商品だ。
信託報酬が低く設定されているとともに、ノーロードの商品も多く存在しコストを抑えられる。
投資すると自動的に日経平均インデックスの会社に分散投資するため、リスクを抑えた運用が可能となる。
S&P500インデックス
米国の代表的な株価指数であるS&P500指数に連動することを目指した投信で、アメリカの主要な500社への投資ができる。
インデックスファンドのため運用コストが低く抑えられ、長期的な資産形成に向く。
S&P500インデックスへの投資で米国のおよそ500社に分散投資が可能なため、特定の銘柄による価格変動リスクに左右されない。
全世界株式(オルカン)
全世界の名の通り、約50ヵ国の株式に分散投資し、世界経済の成長を目指している。
インデックス型投資信託であり、信託報酬は低く抑えられ、長期・分散投資が叶う。
60代は新NISAの成長投資枠も併用しよう!

60代からの新NISAでの資産運用では、成長投資枠も併せて活用するとより、老後の家計設計がしやすくなる。
以下で、成長投資枠の概要と詳しい理由を解説する。
成長投資枠の概要
新NISAの成長投資枠の概要については、以下の表で確認してほしい。
非課税保有期間 | 無制限 |
---|---|
口座開設期間 | 恒久化 |
年間投資枠 | 240万円 |
非課税保有限度額 | 1,200万円(つみたて投資枠との総額:1,800万円) |
投資対象商品 | 上場株式・投資信託等 |
対象年齢 | 18歳以上 |
成長投資枠の投資対象商品は国内外の上場株式や投資信託、ETF、REITなどである。
成長投資枠のみでの保有限度額は1,200万円で、つみたて投資枠との合計額は最大1,800万円までとなる。
成長投資枠を活用すべき理由
60代が成長投資枠を併せて活用すべき理由には以下の3点があげられる。
- つみたて投資枠よりも自由に商品を選択できる
- よりリターンを求められる商品(個別株など)に投資できる
- つみたて投資枠の代わりとして、さらに積立投資もできる
成長投資枠では、つみたて投信よりも幅広い商品ラインナップが魅力だ。
- 上場株式
- 日本株、米国株、外国株(香港、韓国、ロシア、ベトナムなど)
- 投資信託
- 国内外の株式投資信託、バランス型投資信託、インデックスファンド
- ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、ETN(上場投資証券)、IPO(新規公開株)
つみたて投資枠にはないリスクの高い商品に加え、短期投資向きの商品も選べるため「好きな銘柄に投資したい場合」「積極的にリターンを狙いたい場合」に向いている。
また、年間の投資額がつみたて投資枠よりも120万円も多く設定されており、ボーナスや余剰金、退職金などのまとまった資金で老後資産を増やしていきたい人にはおすすめだ。
成長投資枠の購入方法は毎月定額の積立投資と、任意のタイミングで随時分散投資ができるため、積極的に運用したい人にはぴったりだろう。
成長投資枠でおすすめの商品
成長投資枠も活用するならば「インデックスファンド」や「アクティブファンド」に着目してみてはいかがだろうか。
インデックスファンド
日経平均株価やS&P500、NASDAQ100といった、特定の市場指数(インデックス)に連動する運用を目指しており、値動きが分かりやすいため初心者向きである。
市場全体に投資するインデックスファンドは、複数の国や地域へ自動的・定期的に分散投資できるため「長期・積立・分散」の実践が可能となる。
- eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
- eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
全世界株式型や米国株式型、バランス型があり、つみたて投資枠よりもややハイリスク・ハイリターンを狙える商品選択が可能である。
アクティブファンド
特定の指数に連動するインデックスファンドよりも、指数を上回る運用成果を目指すのがアクティブファンドだ。
商品は、ファンドマネージャーが株式市場や企業を徹底的に調査し、プロの目で分析した結果をもとに選定した銘柄である。
市場平均よりも大きなリターンが期待できる一方でリスクも伴い、運用コストもインデックスファンドよりも高めに設定されている。
アクティブファンドは業種やテーマ、投資戦略が多種多様で自由度が高い反面、コストやリスクも高まるため、慎重に運用したい商品だ。
成長投資枠ではその他に「個別株式」への投資も可能ではあるが、あまりおすすめできない。
単一の企業の株式へ投資するため、ハイリスク・ハイリターンが顕著であり、多くの投資家が短期的に売買をした場合は市場の値動きよりも変動が大きくなりやすい。
60代での新NISA運用においては、資産の目減りを防ぐのが目的であるため、個別企業への株式投資は避けた方が無難であろう。
60代は新NISAで毎月いくら積み立てる?

新NISAではつみたて投資枠が月々10万円まで、成長投資枠単体では月々20万円までの積立購入が可能だ。
もちろん上限額までの購入を推奨するわけではなく、生活資金の他に近々必要になる資金、いざという時の費用を除いた「余剰資金」の範囲内での投資が鉄則だ。
実際に運用した場合の例を見ていこう。
毎月10万円を投資したときの運用シミュレーション
毎月10万円を、年利3%・期間35年で非課税控除額の、1,800万円まで投資したとする。
運用年数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1年目 | 5年目 | 10年目 | 15年目 | 20年目 | 30年目 | 35年目 | |
元本(投資額) | 120万円 | 600万円 | 1,200万円 | 1,800万円 | 以降は投資不可(2,270万円を年利3%にて運用) | ||
含み益(運用収益) | 2万円 | 46万円 | 197万円 | 470万円 | 831万円 | 1,736万円 | 2,299万円 |
合計 | 122万円 | 646万円 | 1,397万円 | 2,270万円 | 2,631万円 | 3,536万円 | 4,099万円 |
毎月10万円ずつ投資すると、15年目で上限の1,800万円に達し、以降の追加投資は出来ないため年利3%での運用のみとなる。
配当金は新NISAでは、いくらでも非課税で受け取り可能だが、投資額の上限があることに留意したい。
毎月20万円を投資したときの運用シミュレーション
毎月20万円を投資した場合の運用シミュレーションは、以下の表のとおりだ。
1年目 | 5年目 | 7年目 | 10年目 | 20年目 | 30年目 | 35年目 | |
元本(投資額) | 240万円 | 1,200万円 | 1,680万円 | 7年目の後半以降は投資不可(1,867万円を年利3%にて運用したとする) | |||
含み益(運用収益) | 3万円 | 93万円 | 187万円 | 360万円 | 1,061万円 | 2,004万円 | 2,591万円 |
合計 | 243万円 | 1,293万円 | 1,867万円 | 2,040万円 | 2,741万円 | 3,684万円 | 4,271万円 |
毎月20万円ずつ投資した場合には、7年半で上限の1,800万円に達し、以降の追加投資は出来ないため年利3%での運用となる。
ここでは7年での投資金額1,680万円に対しての、運用成果を見ていこう。
8年目以降に追加投資がなく運用し続けた場合、35年目には複利効果でおおよそ元本の倍額以上の収益が発生する計算になる。
毎月30万円を投資したときの運用シミュレーション
最後に毎月30万円ずつ投資した場合の運用例を紹介する。
1年目 | 5年目 | 10年目 | 20年目 | 30年目 | 35年目 | |
元本(投資額) | 360万円 | 1,800万円 | 以降は投資不可(1,939万円を年利3%にて運用) | |||
含み益(運用収益) | 5万円 | 139万円 | 447万円 | 1,220万円 | 2,259万円 | 2,906万円 |
合計 | 365万円 | 1,939万円 | 2,247万円 | 3,020万円 | 4,059万円 | 4,706万円 |
月々30万円は、年間360万円で新NISAの上限額である。
成長投資枠に240万円、つみたて投資枠に120万円ずつ毎年投資した場合のおおよそのシミュレーションだ。
3つの例をご覧いただいたとおり、少額からでもコツコツと資産形成を行えば、十分な複利効果が得られる。
平均寿命が伸びている長寿社会では60代からでも、10年、20年といった運用期間が確保できるため、今からでも運用益や配当金が非課税で受け取れる新NISAを始めてみるといいだろう。
60代が新NISAで運用するときの注意点

60代が新NISAで運用するときには、以下のことに注意したい。
- 損益通算・繰越控除はできない
- 過度なリスクを負わない
- 余剰資金以上の投資をしない
新NISAでは、運用して出た利益に対して非課税のメリットがある一方で、損失が発生した場合には「損益通算」「繰越控除」ができないリスクがある。
課税口座における株式投資では、損失をほかの利益と相殺して年内の課税所得を減らす「損益通算」や、翌年以降に持ち越して、翌年の利益から差し引く「繰越控除」がある。
しかし、NISA口座では対象外のため損失が出ないように投資していく必要がある。
また、前項では運用シミュレーション例をあげたが、新NISAでは期待したリターンが得られず、元本割れをする可能性も含んでいる。
老後資金を減らさない目的のため、リスクの高い商品は避け「長期・分散・積立」を念頭に置いた商品選びを心がけよう。
新NISAでは年間投資額の設定があるが、無理に全部使ってしまうと、日常生活や急な出費(医療費や冠婚葬祭など)に困ることにもなりかねない。
老後の生活と投資のバランスを取りながら、自分に合った運用計画を立てることが重要だ。
60代が新NISAを始めるときはプロに相談しよう

60代からの投資は、ぜひ以下のような資産運用のプロに相談しよう。
資産運用のプロへの相談先
投資の相談をしたい場合は、以下のようなプロに相談しよう。
- 証券会社
- FP
- IFA
証券会社は投信・株式投資に関してはプロだが、日常的に足を運ぶ機会が少なく、相談に赴くのに敷居が高く感じるかもしれない。
一方でFP(ファイナンシャルプランナー)は個人で活動している場合も多く、収支の見直しやライフプラン作成を得意とするが、個別銘柄の提案は行うことができないデメリットがある。
IFAは耳慣れないかもしれないが、証券会社に所属しない独立系アドバイザーであり、経験豊富な資産運用のプロである。
組織に属しないゆえの、フラットな意見がもらえるだろう。
プロに相談するメリット
60代から始める資産運用では、最適な運用方法や商品は人によって様々だ。
そのため、今後のライフプランやリスク許容度に応じた個別のプランが必要になる。
金融商品について知識が多くない人にとっては、投資計画を立てるのは難しく骨が折れることだろう。
資産運用のプロに相談すれば、個人の状況にあわせたアドバイスをもらえ、投資初心者であっても安心して運用できるメリットがある。
60代からでも遅くない!老後資金のために新NISAでの運用を始めよう

老後資産を形成するには、60代からでも新NISAを活用すると「複利効果」に加え「非課税効果」が十分に受けられメリットが大きい。
最大1,800万円まで投資できるが、「長期・分散・積立」の王道であるつみたて投資枠から運用を始めるのがおすすめだ。
中でも「インデックス型投資信託」の株式型が、リスク分散を行いつつ安定したリターンを目指せ、60代の老後資金形成にぴったりだろう。
ボーナスや退職金などの余剰金がある人は、成長投資枠ならば多彩な商品に投資でき、さらにリターンを狙うことが可能だろう。
ただしくれぐれも、過剰なハイリスク・ハイリターンを求めすぎないよう、初めての運用はプロに相談しながら行ってほしい。