- 相続資産におすすめの資産運用が知りたい
- 相続資産を運用するときの注意点が知りたい
- 相続資産の運用を相談できる先が知りたい
相続によって資産を受け継いだ場合、その資産をどう扱うかを慎重に考える必要がある。
預貯金としてそのまま保有する方法もあるが、長期的には物価上昇によって実質的な価値が目減りする可能性がある。実際に、消費者物価指数(総合、2020年=100)は2026年3月に112.7となり、前年同月比で1.5%上昇している。
そのため、相続したお金の一部を資産運用に回すことで、資産価値の維持や将来的な増加を目指せる。
ただし、相続資産は通常の余剰資金とは異なる。相続税の申告・納税、準確定申告、相続放棄、不動産の相続登記、他の相続人との遺産分割など、投資を始める前に確認すべき手続きが多い。
本記事では、相続資産の運用方法、運用を始める前に確認すべきこと、成功させるポイント、注意点、相談先を解説する。
相続した資産をどう扱えばよいか不安な方は、ぜひ参考にしてほしい。
相続資産を運用する前に確認すべきこと

相続資産を運用する前に、まずは「すぐ使う必要があるお金」と「長期で運用できるお金」を分けることが大切だ。
相続したお金が手元に入ったからといって、すぐに全額を投資に回すのは避けたい。
以下のような支払い・手続きが残っている場合、運用より先に資金を確保しておこう。
| 確認すること | 期限・目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 相続放棄の検討 | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 | 借金や保証債務がある場合は、投資より前に相続するかどうかを判断する |
| 準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 | 亡くなった方に確定申告が必要な所得がある場合に確認 |
| 相続税の申告・納税 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 | 基礎控除を超える場合は申告・納税が必要 |
| 不動産の相続登記 | 不動産の取得を知った日から3年以内 | 2024年4月1日から相続登記が義務化 |
| 生活防衛資金 | 生活費の6か月〜1年分程度が目安 | 急な支出に備え、預貯金などで確保する |
相続税は、相続財産に必ずかかるわけではない。
正味の遺産額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除額を超える場合に、相続税の申告・納税が必要になる。
たとえば、法定相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円だ。正味の遺産額が4,800万円以下であれば、原則として相続税はかからない。
一方で、不動産や有価証券を含む場合は評価額の確認が難しいことがある。遺産分割協議が終わっていない状態で資産を動かすと、他の相続人とのトラブルにつながる可能性もある。
まずは相続税や登記、相続人間の合意を整理し、納税資金や生活費を確保したうえで、余剰資金の範囲で運用を始めよう。
相続資産におすすめの資産運用とは
相続資産としてまとまったお金を受け継いだ場合、目的やリスク許容度に合わせて運用方法を選ぶことが重要だ。
相続資産の運用では、以下のような選択肢がある。
- 預貯金・個人向け国債
- 投資信託・ETF
- 株式投資
- 不動産・REIT
それぞれの特徴を見ていこう。
預貯金・個人向け国債|納税資金や生活防衛資金に向く
相続資産の一部は、預貯金や個人向け国債など、安全性や流動性を重視した形で保有するのがおすすめだ。
相続税の納税、葬儀費用、当面の生活費、住宅修繕費など、近い将来使う可能性があるお金は、値動きの大きい投資商品に回さないほうがよい。
預貯金は収益性が高いとはいえないが、すぐに使える点が大きなメリットだ。
個人向け国債は、国が発行する債券で、一定期間後に中途換金できる仕組みがある。投資信託や株式より値動きが小さいため、守りの資産として検討しやすい。
相続資産のすべてを運用するのではなく、まずは必要資金を安全に確保し、残りを長期運用に回すことが大切だ。
投資信託・ETF|分散投資しやすく初心者にも検討しやすい
相続資金を運用する方法として、投資信託やETFは検討しやすい選択肢だ。
投資信託とは、投資家から集めた資金を運用会社が株式や債券などに分散投資する金融商品である。
ETFは上場投資信託のことで、証券取引所に上場しており、株式のように市場で売買できる。
投資信託・ETFのメリットは、少額から複数の銘柄や資産に分散投資できることだ。
個別株に集中投資すると、1社の業績悪化や不祥事が資産全体に大きく影響する可能性がある。一方、投資信託やETFを使えば、世界中の株式や債券にまとめて投資できる商品もある。
相続資産の運用では、全世界株式型、先進国株式型、バランス型、債券型など、自分のリスク許容度に合った商品を選ぶとよい。
ただし、投資信託には信託報酬などのコストがかかる。販売手数料、信託報酬、信託財産留保額、運用方針、投資対象、過去の値動きなどを確認して選ぼう。
株式投資|高いリターンを狙えるが集中投資に注意
相続資産の運用方法として、株式投資も挙げられる。
株式投資では、企業が発行する株式を購入し、株価の値上がり益や配当金を狙う。
成長企業の株式を保有できれば、大きなリターンを得られる可能性がある。配当金や株主優待を受け取れる銘柄もある。
一方で、株式は値動きが大きく、企業業績や景気、市場環境によって価格が大きく下がることもある。
相続したお金を一括で特定の個別株に投じると、値下がり時の影響が大きくなりやすい。
株式投資をする場合は、複数の銘柄や業種に分散するか、株式型投資信託・ETFを活用するとよい。
個別株は、市場や企業業績を調べる時間があり、価格変動に耐えられる人に向いている。
不動産・REIT|相続不動産の活用は登記や管理リスクも確認
受け継いだ不動産を活用したり、相続したお金で新たに物件を購入したりして、不動産投資を行う方法もある。
不動産を貸し出せば、家賃収入を得られる可能性がある。
ただし、不動産投資には空室リスク、家賃下落、修繕費、固定資産税、管理費、災害リスク、売却しにくい流動性リスクがある。
また、不動産を相続した場合は、相続登記の手続きも必要だ。2024年4月1日から相続登記が義務化されており、不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要がある。
相続人が複数いる場合、共有名義のまま不動産を貸したり売ったりすると、意思決定が難しくなることもある。
不動産を活用する前に、遺産分割、名義変更、税金、管理方針を整理しよう。
現物不動産への投資が重いと感じる場合は、REITも選択肢になる。
REITは不動産投資信託のことで、投資家から集めた資金でオフィスビル、商業施設、住宅、物流施設などに投資し、賃料収入や売却益を分配する仕組みだ。
現物不動産より少額で始めやすい一方、金利上昇、不動産市況悪化、空室率上昇、分配金減少などのリスクがある。
相続資金の資産運用に成功するためのポイント

相続資産を運用する方法はさまざまで、最適解は人によって異なる。
相続したお金を有効活用し、将来的に後悔しないためには、以下のポイントを押さえよう。
目的やリスク許容度に合わせて投資先を選ぶ
相続資産を運用する場合、目的やリスク許容度に合わせて投資先を選ぶ必要がある。
まず、「何のために運用するのか」を明確にしよう。
- 老後資金を増やしたい
- 子どもや孫の教育資金に備えたい
- 相続した不動産を維持したい
- 納税後に残った資金を長期で運用したい
- 家族に資産を残したい
短期で使う予定があるお金なら、預貯金や個人向け国債など安全性を重視したい。
10年以上使う予定がないお金なら、投資信託や株式を組み合わせて成長を狙うことも検討できる。
リスク許容度とは、どの程度の損失まで耐えられるかを示す度合いだ。
同じ相続資産でも、年齢、収入、家族構成、住宅ローンの有無、他の資産状況によって取れるリスクは変わる。
資産が一時的に20%下がっても冷静に保有できる人と、5%下がっただけで不安になる人では、選ぶべき投資先が違う。
自分のリスク許容度を把握し、無理なく続けられる運用を選ぼう。
投資先を分散する
相続資産の運用では、投資先を分散することが重要だ。
投資の世界では、「卵を1つのかごに盛ってはいけない」という言葉がある。
1つの投資先に資金を集中させると、その投資先が値下がりしたときに資産全体へ大きな影響が出る。
分散の考え方は、以下のように整理できる。
| 分散の種類 | 内容 |
|---|---|
| 資産の分散 | 預貯金、債券、株式、投資信託、REITなどに分ける |
| 地域の分散 | 日本、米国、先進国、新興国などに分ける |
| 通貨の分散 | 円建て資産だけでなく、必要に応じて外貨建て資産も検討する |
| 時間の分散 | 一括投資だけでなく、積立や分割投資も使う |
相続したお金が大きいほど、一度に投資したくなるかもしれない。
しかし、投資初心者であれば、複数回に分けて投資することで高値づかみの不安を抑えやすい。
ポートフォリオの作り方に自信がない場合は、後ほど紹介する専門家に相談してみよう。
長期目線での運用を心がける
相続したお金は、長期目線で運用することが大切だ。
短期的な相場の値動きを予測して売買を繰り返すのは、投資初心者にとって難易度が高い。
長期投資では、複利効果を活かしやすく、短期的な値動きに振り回されにくい。
ただし、長期投資であれば必ず利益が出るわけではない。投資先の分散、低コスト商品の選択、定期的な見直しが必要だ。
相続資産を長く守りながら増やしたい場合は、「長期・分散・積立」を基本に運用しよう。
NISAやiDeCoの制度も確認する
相続資産を運用するなら、NISAやiDeCoなどの制度も確認したい。
NISAでは、一定の投資枠内で得られる配当金・分配金・譲渡益が非課税となる。
2024年以降のNISAでは、年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計360万円、非課税保有限度額は1,800万円となっている。成長投資枠のみの利用上限は1,200万円だ。
相続した資金を一度にすべてNISAへ入れることはできないが、数年に分けてNISA枠を活用する方法は検討できる。
iDeCoは、老後資金づくりを目的とした私的年金制度で、掛金が所得控除の対象となるなど税制上のメリットがある。
ただし、iDeCoは原則として60歳まで引き出せないため、相続資産のうち「老後まで使わないお金」で活用するのが基本だ。
相続資産をどの制度で運用するかは、年齢、収入、税金、資金の使い道を踏まえて判断しよう。
相続資産を運用するときの注意点

相続資産を運用する際は、失敗につながりやすい注意点も把握しておくことが大切だ。
以下の注意点を理解し、相続した資産を守りながら運用しよう。
必要なお金は運用せず、余剰資金で投資する
相続資産の運用は、手元に置いておくべきお金を差し引いた残りで行うことが大切だ。
相続税や準確定申告の納税資金、生活費、医療費、住宅修繕費、教育費など、近いうちに使う可能性があるお金は、値動きのある投資商品に回さないようにしよう。
十分な生活費と緊急時の費用を確保できていれば、相場が一時的に下落しても焦って売却せずに済む。
特に、相続直後は気持ちが落ち着かず、冷静な判断がしにくいこともある。
まずは資産全体を把握し、必要な支払いを整理してから運用を始めよう。
リスク管理を行い、利益を追求しすぎない
相続資産の運用では、リスク管理を徹底する必要がある。
まとまったお金を受け取ると、大きなリターンを期待してリスクの高い投資に資金を集中させてしまうことがある。
しかし、リターンが大きい投資はリスクも大きい。
株式、投資信託、REIT、不動産、暗号資産などは、いずれも元本割れの可能性がある。
相続した資産は、自分だけでなく家族にとっても大切なお金であることが多い。
利益を追いすぎず、守るお金と増やすお金を分けて運用しよう。
相場を意識しすぎない
相続したお金で資産運用をするときは、相場に振り回されないよう注意したい。
相場は日々変動する。大きく上がる日もあれば、大きく下がる日もある。
短期的な値動きに反応して売買を繰り返すと、高値で買って安値で売る行動になりやすい。
積立投資は、購入時期を分散できるため、高値づかみのリスク軽減が期待できる。
また、投資先を分散することで、特定の資産や銘柄の値動きがポートフォリオ全体に与える影響を抑えやすくなる。
相続資産は、短期で増やすよりも、長期で守りながら増やす考え方が向いている。
家族や他の相続人とのトラブルに注意する
相続資産を運用する際は、家族や他の相続人との関係にも注意が必要だ。
遺産分割協議が終わっていない資産を勝手に運用したり、不動産を貸したり売却したりすると、後からトラブルになる可能性がある。
特に、不動産や有価証券を複数人で共有している場合は、誰が管理するのか、収益や費用をどう分けるのかを決めておく必要がある。
相続資産を運用する前に、遺産分割協議書や名義変更の状況を確認し、必要に応じて税理士や司法書士、弁護士に相談しよう。
相続資金の運用はプロに相談しよう

相続資産をそのまま放置せず運用することで、価値の維持や向上を目指せる。
しかし、相続資産は税金、登記、遺産分割、投資判断が関わるため、自分だけで判断するのが難しい場合もある。
不安がある場合は、資産運用や相続の専門家に相談しよう。
相続資金の運用をプロに相談するメリット
相続したお金の運用をプロに相談すると、自分に合った運用方法を整理しやすい。
相続資金の運用方法は多様で、投資金額、リスク許容度、年齢、家族構成、相続税の有無によって適切な方法が変わる。
専門家に相談すれば、以下のような点を整理しやすくなる。
- 納税資金をいくら残すべきか
- 相続資産のうち、どの範囲を運用に回せるか
- NISAやiDeCoをどう活用するか
- 不動産を売る・貸す・保有するどれがよいか
- 株式や投資信託の配分をどうするか
- 家族や他の相続人との合意をどう進めるか
ただし、プロに相談したからといって利益が保証されるわけではない。
金融商品を提案される場合は、手数料、リスク、販売者の立場、利益相反の有無を確認し、自分でも内容を理解してから判断しよう。
相続したお金の運用について相談できるプロ
相続資金の運用について相談できる主な専門家は、以下のとおりだ。
| 相談先 | 相談しやすい内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税申告、納税資金、相続財産評価、節税の考え方 | 資産運用商品の具体的提案は専門外の場合がある |
| 司法書士 | 相続登記、不動産名義変更、遺産分割後の登記手続き | 投資判断や税務相談は別の専門家が必要な場合がある |
| 証券会社 | 株式、債券、投資信託、NISAなどの金融商品 | 自社取扱商品の提案が中心になりやすい |
| FP | 家計、保険、老後資金、教育費、資産配分の考え方 | 金融商品の具体的な仲介・販売には登録が必要な場合がある |
| IFA | 金融商品仲介、資産配分、証券口座を使った運用相談 | 金融商品仲介業者としての登録、手数料体系、提携証券会社を確認する |
| 弁護士 | 遺産分割トラブル、相続人間の争い、遺言の解釈 | 投資や税務は別の専門家と連携が必要な場合がある |
証券会社には、資産運用についてアドバイスできる担当者がいる。
投資信託や債券、株式などの金融商品について相談しやすい一方、提案される商品はその証券会社が取り扱う商品に限られる。
FPは、ライフプラン全体を踏まえて資金計画を相談しやすい。
ただし、FPによって得意分野が異なるため、相続や資産運用に詳しいかを事前に確認しよう。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)は、金融商品仲介業者として金融商品の提案や取引のサポートを行う場合がある。
相談する場合は、金融商品仲介業者として登録されているか、提携している証券会社はどこか、報酬や手数料はどのように発生するかを確認したい。
相続税や不動産の名義変更が関わる場合は、税理士や司法書士への相談も必要だ。
相続資産の運用は、税務・登記・投資の知識が重なるため、必要に応じて複数の専門家に相談しよう。
相続資産の運用方法は、自身に合うものを選ぼう

相続資産は、ただ預貯金に置いておくだけでなく、目的に応じて運用を検討することで、資産価値の維持や向上を目指せる。
ただし、相続した資産をすぐ全額投資する必要はない。
まずは、相続税や準確定申告、不動産の相続登記、相続放棄の期限、遺産分割の状況を確認し、納税資金や生活防衛資金を確保しよう。
そのうえで、預貯金・個人向け国債、投資信託・ETF、株式、不動産・REITなどから、自分の目的やリスク許容度に合う方法を選ぶことが大切だ。
相続資産の運用で大切なのは、短期的な相場に振り回されず、長期・分散・積立を意識することだ。
NISAやiDeCoなどの制度も活用できるが、制度ごとの投資枠や引き出し制限を理解して使う必要がある。
相続資産の運用について悩んでいるなら、税理士、司法書士、FP、証券会社、IFAなどの専門家に相談しよう。
相続資産は、自分や家族の将来を支える大切なお金だ。焦らず手続きを整理し、自分に合った運用方法を選んでほしい。
出典
国税庁「No.4152 相続税の計算」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」(更新日:2025年4月1日)
裁判所「相続の放棄の申述」
政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を調べる方法は?」
総務省統計局「消費者物価指数(CPI)全国 2026年(令和8年)3月分」
総務省統計局「人口推計」
金融庁「資産形成の基本」
金融庁「NISA特設ウェブサイト よくある質問」
国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
厚生労働省「iDeCoの概要」
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金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」


