- 同年代がどのような資産運用をしているのか知りたい
- 50代におすすめの投資先が知りたい
- 50代の資産運用によくある失敗を知り、対策したい
NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、資産運用は身近なものになった。
数年前に話題になった「老後2,000万円問題」など、将来のための老後資金を自助努力で用意しなければならないと考えている人もいるだろう。
この記事では、50代から資産運用をするメリット・デメリット、おすすめ投資商品を紹介する。
50代の資産運用でよくある失敗例や対処法も解説するので、これから資産運用を始めようと思っている方はぜひ本記事を参考にしてみてほしい。
50代からでも遅くない!資産運用を始めるべき理由

定年退職が近づく50代の中には、老後資金について考え始める方もいるかもしれない。
一方で、NISAやiDeCoといった少額から始められる投資制度は若者向けのものであり、今さら資産運用を始めても遅いかもしれないと心配している人もいるだろう。
しかし、50代からの資産運用は、決して遅くはない。
弊社が50代を対象に実施したアンケートでも、投資経験が3年未満の人が約30%、1年未満の人は約13%であり、資産運用の損益がプラスになっている人は全体の約65%となっている。
このように、50代から資産運用を始めても、十分に資産を増やせる可能性があるのだ。ここで、50代からでも資産運用を始めるべき理由を解説していく。
老後資金は年金だけでは不足する
50代を迎えると、定年退職が近づきセカンドライフを考え始めるようになる。セカンドライフでは労働収入がなくなるため、主な収入は年金になる人が多いだろう。
一方で、2023年に実施された総務省の家計調査報告によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均収入は244,580円なのに対し、支出は282,497円であり、毎月37,916円の不足が発生するとされている。
年間では約45万円の不足であり、老後生活が30年続くと仮定すると約1,350万円の不足となる。
なお、2019年の調査では65歳以上の無職世帯の収支は毎月約5.5万円の不足が発生し、この赤字が30年続いた場合に2,000万円不足するという試算が「老後2,000万円問題」のきっかけとなった。
不足分は貯金や退職金などを取り崩すことになる。人生100年時代、定年後もまだまだ人生は続いていく。
豊かな老後を過ごすために、現役時代から自助努力による資産形成が求められている。
預貯金だけではインフレリスクに備えられない
では、老後資金を退職までに預貯金でしっかり貯めきっておけばいいのではないか、と考える人もいるかもしれない。しかし、預貯金だけで老後資金を準備するのは避けたほうが望ましい。
日本は長い間物価が上がらないデフレ状態が続いていたが、2021年から物価が上がるインフレに転換している。
日本銀行は年間2%の物価上昇率を目標としている一方で、普通預金の金利は大手都市銀行でも0.1%程度である。
インフレが目標通りに実現した場合、現金の価値は2%ずつ目減りすることになるのだ。
これでは、せっかく将来必要とされる金額を貯めても、それ以上に物価が上がっていれば、結局「お金が足りない」状態になってしまう。
そのような状況を避けるために、インフレに負けない運用を実現するべく資産運用が注目されている。
早めに資産運用を始めるほうが複利効果を活かせる
預貯金や投資の運用方法は「単利」と「複利」の2種類がある。単利とは当初の元本のみ運用する方法であり、利息も元本にのみ発生する。
一方、複利は「元本+利息」に対して利息が発生するため、より効率よく資産を増やせる可能性がある。
なお、運用期間が長期になればなるほど複利効果は大きくなる。
たとえば、毎月10万円を年率3%で10年間積立投資した場合の運用資産総額は1,397万円。
毎月5万円を年率3%で20年積立投資した場合の運用資産総額は1,642万円になる計算だ。どちらも元本は1,200万円だが、運用収益には約245万円もの差が生まれる。
このように、複利の効果を最大限発揮するならば、資産形成はできるだけ早く始めるほうが望ましい。
50代の資産運用におすすめの投資先

ここで、50代から資産運用を始める際のおすすめの投資先を紹介する。
50代の投資傾向と人気の金融商品
50代は年収が高くなり、子どもの教育費が落ち着くため金銭的な余裕が生まれる傾向にある世代だ。
預貯金や相続などでまとまった資金があるケースもあり、一括で大きい金額を運用することも可能である。
一方で、これまで投資経験がない場合は何に投資したらいいかわからない人もいるだろう。
弊社が実施したアンケートによると、50代が実際に運用している資産は投資信託が70.4%、次いで株式投資が60.5%と過半数を超えていた。
おすすめの投資先は回答が多かったものから順に「投資信託」「株式」「債券」「ETF・REIT」であった。
ここでは、50代におすすめの金融商品とそれぞれの特徴を紹介する。リスク許容度や運用スタイルにはどの商品が適しているかの参考にしてほしい。
投資信託
投資初心者に人気の投資信託は、50代にもおすすめの金融商品のひとつだ。
投資信託(ファンド)とは、投資家から集めた資金をまとめ、運用のプロが投資家に代わって株式や債券といった金融商品に投資・運用する金融商品である。
ただし、投資信託を保有している間は、毎日「信託報酬」と呼ばれる管理・運用のための費用が資産から差し引かれる。
投資信託には株式指数などに連動する運用成果を目指す「インデックス型」と、指数を上回るパフォーマンスを目指す「アクティブ型」の2種類がある。
インデックス型の投資信託はアクティブ型と比較して信託報酬が安い傾向にあり、長期運用に適している。
投資信託は、運用をプロに任せることができるため、投資先を選定する手間がかからない点がメリットだ。
また、ひとつの投資信託を購入するだけで複数の資産や地域に分散投資が可能なため、リスク分散の効果も期待できる。
株式投資
投資といえば株式投資をイメージする人も多いかもしれない。ややリスク許容度の高い運用も選択肢にある場合は、株式投資もいいだろう。
株式投資とは、企業が発行した「株式」を購入し、株価の値上がり益や配当収入を得る投資方法である。
企業の利益が分配される配当金以外にも、企業によっては自社商品や優待券などの株主優待を受け取れることもある。
株式投資は一般的にハイリスク・ハイリターンの金融商品であり、高いリターンを期待できる。
また、配当金による定期的な収入も魅力のひとつだ。
一方で、株価は企業の業績などによる変動リスクが大きいほか、自分で売買のタイミングを見極めなければならないため、投資信託や債券投資よりは難易度の高い投資法といえる。
債券投資
債券投資とは、国や自治体、企業が発行している債券を購入し、値上がり益や定期的な利子収入を得る方法である。
安定的な収入が得られるほか、国債の場合は満期保有で元本が保証されるなど、低リスクの運用を好む人にはおすすめの投資方法だ。
個人向け国債の場合、税引前の利率は年率0.60〜0.71%と決して高パフォーマンスとはいえないものの、銀行に預けるよりも高い利回りが期待できる。
1万円から購入可能で、少額で運用したい人にも向いているだろう。
REIT(不動産投資信託)
REITとは「不動産投資信託」を意味し、投資家から集めた資金を不動産に投資して賃貸収入や売却益を分配する金融商品である。
定期的な賃貸収入や不動産の値上がり益を期待できる不動産投資に興味を持つ人もいるだろう。
しかし、個人で物件を管理する場合は空室や家賃滞納のリスク、維持管理費用の負担なども大きい。
また、個人で複数の物件を所有することは難しいが、REITを通じて投資すれば複数の不動産に投資が可能だ。
また、運用は専門家に任せられるため、売買のタイミングを気にすることもない。リスクを抑えて不動産投資のメリットを享受できるのが魅力といえるだろう。
50代の資産運用に成功するためのポイント

ここで、50代の資産運用を成功させるためのポイントをいくつか紹介していく。
資産運用の基本は「長期・分散・積立」
50代からの資産運用でも、基本に忠実であることが重要なのは変わらない。
特に、投資の基本である「長期・分散・積立」の3つの原則を守ることで、安定的な資産形成が目指せる。
長期投資
投資をする際は、市場の短期的な変動に惑わされることなく、5年、10年といった長い目線で運用することが重要だ。
金融庁の統計でも、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資を行い、5年間と20年間それぞれ保有した場合についての年間収益率を計算したものがある。
5年の場合は元本割れするケースがあり、20年保有している場合は元本割れしたケースはなかったこととされている。
あくまで過去の統計ではあるが、長期運用が投資の成功率を高めるために重要なことがわかる。
分散投資
50代の資産運用は、安定性を重視しつつも、適度なリスクを取ることが重要である。
値動きの大きい株式に100%投資するのはリスクが高いため、国内外の株式や債券、REITなど複数の資産にバランス良く投資するのがおすすめだ。
50代に人気の商品で紹介した金融商品の中から、自分のリスク許容度に合わせてポートフォリオに組み込んでみるのもいいだろう。
ほかにも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオを参考にするのもおすすめだ。GPIFは国内外の株式と債券に4分の1ずつ均等に投資するシンプルな分散投資をしている。
ただし、市場の変動に応じて資産配分が崩れてしまう可能性がある。
どのような方法でポートフォリオを組むにしても、定期的なリバランスを行い、資産配分を見直すことを意識しよう。
積立投資
投資で利益を出すためには「安く買って高く売る」のが基本だが、投資に慣れていない場合は売買のタイミングを見極めるのが難しいこともあるだろう。
毎月一定額ずつ同じ商品を購入する積立投資の場合は、市場の動きを気にすることなく投資を続けられる。
定期的に一定額を投資するため、価格が高いときには少なく、低いときには多く購入でき、購入価格を平準化することも可能だ。この投資方法を「ドル・コスト平均法」という。
できるだけリスクを分散して運用したい方は、ドル・コスト平均法を用いた投資がおすすめだ。
50代が投資信託を購入するならNISAやiDeCoの活用がおすすめ
NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用することで、より効率的な資産形成が可能となる。
両制度には異なる特徴があり、効果的な資産形成のためには目的に応じて使い分けることが大切だ。
NISAの特徴とメリット・デメリット
NISAは投資信託や株式などの運用益が非課税となる制度で、2014年に開始した。
2024年には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠が設けられ、制度の恒久化と非課税期間の無期限化、年間投資額の引き上げなどの改正があった。
つみたて投資枠と成長投資枠を合わせた年間投資額の上限は360万円であり、生涯の非課税保有限度額は1,800万円である。
NISAのメリットのひとつは、いつでも自由に資産を引き出せる流動性の高さである。
50代の場合は住宅のリフォームや親の介護費用など、突発的な支出があったときに役立つだろう。
一方で、NISAは運用益は非課税になるものの、積立時の税制優遇がない点がデメリットといえる。
iDeCoの特徴とメリット・デメリット
iDeCoは主に老後資金を準備するための私的年金制度であり、公的年金に上乗せする形で利用される。
掛け金が全額所得控除され、運用益が非課税となるため、NISAと比較すると税制メリットが大きいのが特徴である。
受取時にも税制優遇があり、一時金または年金形式で受け取る際にはそれぞれ異なる控除が適用される。
ただし、原則60歳まで引き出しができないほか、年間の拠出限度額が最も高い第1号被保険者や任意加入被保険者の場合でも81.6万円までであり、運用商品が限定的である点はデメリットといえるだろう。
あくまで老後資金を積み立てるための運用方法として活用することをおすすめする。
50代の資産運用でよくある失敗とその対処法

ここまで50代の資産運用でおすすめの商品や投資方法を紹介してきたが、よくある失敗例や対処法も確認しておこう。
適切な資産運用の方法を知らないと、資産を増やせないどころか損失を被ってしまう可能性もある。
ハイリスク商品への過度な投資をしてしまう
50代から投資を始める人の中には、退職金や相続財産などのまとまった資金を株式などのリスクの高い資産に一度に投資して、大きな損失を被ってしまう人もいる。
このような事態を避けるためには、購入タイミングや投資先を分散させて少しずつ投資することが重要である。
また、自身のリスク許容度に応じた商品選択を行い、目標金額や運用期間などを明確に決めておくことも大切だ。
生活資金まで運用に回してしまう
どの世代であっても、投資は余裕資金で行うことが基本である。余裕資金以上の投資をしてしまうと、下落時のプレッシャーに耐えられないほか、生活に影響を与えるおそれもある。
生活資金と投資資金を明確に区分し、無理のない範囲で投資することが大切だ。
50代の場合は、退職後の労働収入がなくなることも考慮し、より慎重な資金計画を立てておくほうがいいだろう。
一時的な相場の変動に一喜一憂してしまう
投資で失敗する人は、一時的な相場の変動に影響されすぎる傾向がある。感情的な投資判断は大きな損失につながる可能性があることを理解し、長期的な投資方針を明確にしておこう。
そのうえで、定期的にポートフォリオを見直すなどして、安定運用を目指すことが大切だ。
50代の資産運用はプロに相談しよう

50代から資産運用を始めるなら、投資先や運用方法などは専門家に相談するのがおすすめだ。
知識がない状態では、リスク許容度に合わない投資をして損失を出してしまったり、思ったように資産を増やせない可能性がある。
資産運用の相談ができる専門家には、証券会社やファイナンシャルプランナー、IFAなどさまざまな種類がある。それぞれ特徴が異なるので、確認していこう。
証券会社
証券会社は豊富な金融商品知識を持ち、具体的な商品提案が可能だ。証券会社によっては、資産運用に関する無料の相談窓口を設けているところもある。
一方で、自社の商品や販売手数料の高い商品などを中心に提案が行われることもあり、中立的な立場からのアドバイスではない可能性がある点には注意が必要だ。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは、資産運用のみに限らず、教育資金や老後資金、保険などのライフプランに関するアドバイスを得意とする。
特定の組織に属する「企業系ファイナンシャルプランナー」と、組織に属さない「独立系ファイナンシャルプランナー」に分けられる。
お金まわりの悩みを広く相談できる一方で、内閣総理大臣による金融商品仲介業者の登録を受けていない場合は個別銘柄の推奨をすることはできず、一般的な商品説明しかできないという制限がある点には注意が必要だ。
IFA
IFAとは、「Independent Financial Advisor」の頭文字を取った略称であり、顧客の状況やニーズに合わせて、金融商品の提案や販売を行う独立系ファイナンシャルアドバイザーである。
特定の金融機関には属さず、複数の証券会社や保険会社と業務委託契約を結んでいるのが一般的だ。
顧客のニーズに合わせて中立的な立場から具体的な商品提案ができるため、資産運用の相談には適しているといえる。
自分に合ったアドバイザーを選ぶコツ
ここで紹介したように、専門家といっても得意分野や立場が異なる。したがって、アドバイザー選びでは、相談内容に応じた専門家を選ぶことが重要である。
自分に合ったアドバイザーを選ぶには、まずは相談したい内容を明確にし、複数の専門家に相談することをおすすめする。
実績や資格の確認、継続的なサポート体制の有無なども確認すべきポイントだ。また、費用対効果を検討するとともに、信頼関係を築けるかどうかも慎重に判断しよう。
50代の資産運用はリスク許容度に合わせて始めれば遅くない

50代からの資産運用は決して遅くない。一方で、「老後2,000万円問題」や年金受給額の減少を考えると、できるだけ早く資産運用を始めるほうが望ましい。
あまり大きなリスクを取りたくない50代の資産運用では、投資信託への投資や債券投資がおすすめだ。
特に投資信託は、分散投資が容易で初心者にも扱いやすいのが魅力である。不動産投資に興味がある場合は、REITも安定的な配当収入が期待できる投資先として選択肢になるだろう。
50代の資産運用を成功させるポイントは「長期・分散・積立」の3原則を守ることである。
また、NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用することで、より効率的な資産形成が可能となる。
このように、50代からでも資産運用で資産を増やせる可能性は十分あるが、投資に不慣れだと過度なリスクテイクや生活資金までの投資、感情的な投資判断など、失敗も起こりやすい。
これらを避けるためには、投資方針の明確化と定期的な見直しが必要だ。
運用に不安がある場合は、証券会社やファイナンシャルプランナー、IFAなどの専門家に相談することをおすすめする。
専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った資産運用をスタートさせてほしい。