- NISAとiDeCoの違いを正しく理解したい
- NISAとiDeCoそれぞれのメリットデメリットを知りたい
- NISAとiDeCoのどちらから始めるべきか知りたい
NISAやiDeCoは、どちらも投資で得られた利益が非課税になるお得な制度だ。
NISA・iDeCoの併用は可能だが、まずは自分にとってお得なほうを選んで始めたい人もいるだろう。
そこで本記事では、NISAとiDeCoのどちらがお得なのかについて、双方の違いやメリット・デメリットも踏まえて解説する。
NISAとiDeCoのどちらで運用を始めるべきなのか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてほしい。
NISAとiDeCoを比較

NISAとiDeCoは資産運用におすすめの制度として紹介されることが多いが、制度の内容は異なる。
ここでは、NISAとiDeCoの違いについて、大きく異なる4項目を解説する。
NISA | iDeCo | ||
---|---|---|---|
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | ||
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 | 24万円~81万6,000円 |
最低投資金額 | なし | 月5,000円(年間6万円) | |
非課税保有期間 | 無期限 | 75歳まで | |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) | なし | |
投資対象商品 | 株・投資信託など | 投資信託定期預金・保険 | |
税制優遇 | 利益の非課税 | 利益の非課税所得税・住民税の軽減受給時の控除 | |
出金制限 | なし | 原則60歳まで出金不可 | |
口座開設手数料 | 無料 | 2,829円 | |
口座管理料 | 無料 | 月160円~(毎月積立の場合) | |
対象年齢 | 18歳以上 | 20歳以上(※)65歳まで |
出典:金融庁「NISAを知る」、iDeCo公式サイト「加入希望者の方へ」
NISAとiDeCoの違い①:税制優遇
NISAとiDeCoは税制優遇の内容が異なり、iDeCoのほうが節税できる金額が大きい。
NISAは投資で得られた利益や株の配当について、国内で発生する税金が非課税になる。
一方でiDeCoは、利益の非課税に加えて年間の掛金額を所得から控除でき、毎年の所得税・住民税を軽減できる。
所得控除については、会社員・公務員なら年末調整で「小規模企業共済等掛金控除」の欄に年間の掛金額を記載し、証明書を添付するだけで税制優遇が受けられる。
口座開設手数料や口座管理料を考慮しても、iDeCoのほうがお得だ。
月1万円で20年間積み立てた場合の節税額(概算) | ||
---|---|---|
NISA | iDeCo | |
非課税額 | 34万7,386円 | 34万1,292円 |
税金の軽減額 | 0円 | 36万円 |
合計 | 34万7,386円 | 70万1,292円 |
出典:金融庁「つみたてシミュレーター」
iDeCoの資産は退職金または年金として受け取ることができ、いずれも所得控除が利用できる。
退職金が多い人は課税されるが、そうでない人は資産の大部分を非課税で受け取ることが可能だ。
NISAとiDeCoの違い②:対象年齢や運用期間
NISAは18歳以上であれば、年齢を問わず一生涯運用できる。
一方でiDeCoは、積み立てた資産については75歳まで運用できるが、掛金を出して運用できるのは65歳までだ。
なお、iDeCoの加入可能年齢は70歳への引き上げが検討されており、将来的には70歳まで掛金を拠出した運用ができる可能性が高い。
NISAとiDeCoの違い③:出金できるタイミング
NISAはいつでも出金できるが、iDeCoは私的年金制度の一つであることから、出金できるのは原則60歳以上に制限されている。
高度障害になったときや死亡したときなど例外的に出金できる場合はあるが、一度iDeCoで運用を始めたら60歳までは出金できないと考えたほうがいい。
NISAとiDeCoの違い④:対象商品
NISAは投資信託だけでなく株にも投資できるが、iDeCoは各金融機関が投資対象に選定した投資信託または元本確保型の商品に限られる。
対象商品の数はiDeCoが圧倒的に少なく、法令により上限35本(ターゲットイヤー型は1本とみなす)に制限されている。
iDeCoの商品数は、多すぎて運用者が迷ってしまわないようにとの配慮から制限されているが、投資経験者を中心に少ないと感じる人もいるだろう。
NISAとiDeCoのメリット・デメリットとは?

NISAとiDeCoには、それぞれメリット・デメリットがある。
両方始められるほど余裕があるなら併用してもいいが、どちらかに絞りたいなら双方のメリット・デメリットを理解したうえで選ぼう。
NISAのメリット
NISAのメリットは、以下の3つ。
- 運用益が非課税になる
- 出金制限がないので教育費や住宅ローンの頭金に備えた運用もできる
- 投資信託だけでなく株にも投資できる
NISAはiDeCoと異なり、出金制限がない。老後資金はもちろん、30代~40代で必要になる教育費や住宅ローンの運用もできる。
対象商品は投資信託・日本株・米国株など幅広く、配当や株主優待を目的にした投資も可能だ。
NISAのデメリット
一方でNISAには、2つのデメリットがある。
- 元本割れのリスクがある
- 損益通算ができない
NISAで投資できる商品は、いずれも元本割れのリスクがある。
元本割れリスクについては、長期積立投資に適した銘柄が厳選されたつみたて投資枠でも存在する。
NISAのつみたて投資枠は投資初心者向けと紹介されることが多いが、株式を投資対象に含んでいるので株価暴落時のリスクは高い。
長期的に見れば株式に投資したほうが他の資産よりも儲かるという実績はあるが、暴落時の評価損がどうしても許容できない人にはNISAはおすすめできない。
すでにNISA口座以外(特定口座など)で運用している人は、NISA口座との損益通算ができない点も理解しておこう。
NISAでの運用は利益・損失がなかったとみなされるため、NISAの損失をNISA以外で発生した利益と合算して税金を減らすことはできない。
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットは、以下の3つ。
- 3種類の税制優遇があり節税効果が高い
- 老後資金を計画的に積み立てられる
- リスクが極めて低い元本確保型の商品(定期預金・保険)も選べる
iDeCoには利益の非課税・税負担の軽減・受取時の控除という3種類の税制優遇があるため、節税効果が高い。
iDeCoは60歳まで運用資金を出金できない分、老後資金に備えて計画的に積立投資ができる。
出金できない点は一見デメリットのように思えるが、衝動的にお金を使ってしまいがちな人にはむしろメリットになる。
iDeCoはNISAと異なり、元本確保型の商品(定期預金・保険)も選択可能だ。
定期預金や保険でも税制優遇が受けられる点は変わらないので、会社員や公務員なら単なる貯金よりも節税できる分お得になる。
1,000〜2,000万円程度の退職金が見込まれる人は受取時の税金も考慮する必要があるが、そうでないならiDeCoは税制上のメリットが大きい制度だ。
iDeCoのデメリット
一方でiDeCoには、3つのデメリットがある。
- 原則として60歳まで出金や脱退(解約)ができない
- 対象商品が極めて少ない
- 口座開設手数料や口座管理料がかかる
iDeCoは私的年金制度の一つであるため、60歳まで出金できない。
会社員・公務員は一度加入すると60歳までiDeCoの脱退も事実上不可能になってしまうため、毎月5,000円以上の掛金を拠出できる自信がない人には向かない。
iDeCoは対象商品が極めて少なく、投資信託または元本確保型の商品に限られる。自分で好きな銘柄を選んで運用したい人は、株にも投資できるNISAのほうが利用しやすいだろう。
また、iDeCoは口座開設手数料や口座管理料がかかるため、税制優遇がほとんど受けられない専業主婦や学生は、NISAを選んだほうが低コストで運用できる。
NISAとiDeCoはどちらがおすすめ?

NISAとiDeCoは併用できるが、物価高で生活が苦しい現状を考慮すれば、両方とも活用できる余裕のある人は決して多くはないだろう。
ここでは、NISAとiDeCoのどちらかを選びたい人向けに、おすすめの人を解説する。
NISAがおすすめの人
NISAがおすすめの人は、以下の通り。
- 自由度の高い運用をしたい人
- マイホームや子供の教育費に備えて資産を増やしたい人
- 少額からスタートしたい人
NISAはいつでも出金・解約できるので、老後資金がいくらかかるのか試算できていない人は、iDeCoではなくNISAから始めたい。
ネット証券なら100円から投資信託を買えるので、気軽に始められる。
運用目的を問わず、余裕がない人は万が一の際に出金できるNISAから始めるのが無難だ。
iDeCoがおすすめの人
iDeCoがおすすめの人は、以下の通り。
- 老後に備えた運用を始めたい人
- 節税を考えている会社員や公務員
- 資産にある程度余裕がある人
iDeCoは一度始めると、原則として60歳までやめることができない。手続きをすれば毎月の掛金はゼロにできるが、口座管理料が最低でも月55円かかる。
iDeCoは、毎月確実に5,000円以上積み立てられる会社員や公務員以外は、活用しづらい。
使途も老後資金に限定されてしまうため、iDeCoは教育費や住宅資金などがある程度確保できている人向けの制度だ。
なお、専業主婦や学生はそもそも税制優遇をほとんど受けられないため、口座の維持費が発生しないNISAのほうが向いている。
NISAやiDeCoで運用するときの注意点

NISAやiDeCoで運用するときの注意点が3つある。株価上昇時はつい気が大きくなってどんどん投資額を多くしがちだが、今一度投資にはリスクがあることを理解しておこう。
- リターンだけでなく暴落時のリスクも想定しておく
- 無理に限度額を埋めようとしない
- 投資先を定期的に見直す
リターンだけでなく暴落時のリスクも想定しておく
運用を始める前に、暴落時のリスクを想定しておこう。
リーマンショックからすでに16年以上経っており、株価暴落の恐怖を知らない人や忘れている人が多い。
ちなみにリーマンショックでは主要な米国株の指数(S&P500)が約50%下落し、リーマンショック前の高値に戻るまでに5年以上かかっている。
その後の株価が上昇したことは言うまでもないが、少なくとも5年以上元本割れした状態を我慢し続けた人だけが大きな利益を得ているのも事実だ。
長期的に見ればできる限り早めに投資を始めたほうがリターンは大きいが、このリスクを許容できる金額にとどめておいたほうがいいだろう。
無理に限度額を埋めようとしない
一つ目の注意点と関連するが、暴落時のリスクも考慮して無理に限度額を埋めようとしないほうがいい。
今後の株価が上がるとしても、万が一に備えてある程度の現金は確保しておく必要がある。
余剰資金の範囲内で投資しておけば暴落時に冷静に対処できるし、余裕があれば買い増しもできるだろう。
投資先を定期的に見直す
米国株や日本株など投資先を特定の国に絞っている人は、少なくとも年1回は投資先を見直そう。
日経平均株価がバブル崩壊後に大きく値下がりし、元の株価に戻るまでに30年以上かかったことを考えれば、今おすすめといわれる投資先が今後も儲かるとは限らない。
定期的に値動きをチェックし、購入当初と状況が変わったのであれば他の商品に買い換えるのも選択肢の一つだ。
NISAとiDeCoでの運用に悩んだら?

NISAやiDeCoをネット証券で始める場合は自分で投資先を決めなければいけないが、投資経験が乏しい人にとっては難しいだろう。
運用方法や投資先の選定に悩んでいる人は、一度プロに相談してみることをおすすめしたい。
NISAやiDeCoの運用を専門家に相談するメリット
NISAやiDeCoの運用を専門家に相談するメリットは、以下の3つ。
- 金融機関選びで失敗するリスクを抑えられる
- 自分に合う商品を選びやすくなる
- 金融機関に所属しない専門家なら中立的なアドバイスも期待できる
NISAやiDeCoは制度の名称にすぎず、金融機関によって取扱商品や手数料が異なる。口座開設後も金融機関は変更できるが、NISAやiDeCoの変更は手間がかかるためできる限り避けたい。
口座開設前にプロに相談すれば、取扱商品が豊富で手数料の安い金融機関を選べる可能性が高まるだろう。
NISAは日本株・米国株・投資信託だけで5,000銘柄以上扱う金融機関が複数あり、iDeCoでも多いところでは35〜40銘柄ある。
この中から商品を選ぶ際に、専門家のアドバイスがあったほうが自分にあうものを選べる可能性が高い。
特定の金融機関に所属しない独立系のアドバイザーなら、営業成績に影響されない中立的なアドバイスも期待できる。
資産運用の主な相談先
資産運用の主な相談先は、以下の通り。中立的な専門家に相談したいなら、FPやIFAが適している。
- 証券会社の担当者
- FP(ファイナンシャルプランナー)
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
証券会社の担当者は資産運用のプロと思われがちだが、営業のプロといったほうが実態に近い。
上長から営業成績によって評価される風土が残っている限り、ノルマがなかったとしても自社に有利な商品を優先して提案せざるを得ないだろう。
顧客の利益を第一に考えてくれそうな専門家に相談したいなら、FPやIFAがおすすめだ。
FPは個別銘柄について提案やアドバイスはできないが、一般的な資産運用や家計全般の相談ができる。
NISAやiDeCoを始めたいけど資産に余裕がない人は、FPに相談して家計の見直しをしてもいいだろう。
IFAなら、個別銘柄の提案やアドバイスが受けられる。以前は金融機関に勤めていて、会社との方針の違いなどからIFAになった人も多いので、資産運用の経験も十分だ。
営業成績による提案商品の制約がないので、証券会社と比べて顧客目線に立った提案が期待できるだろう。
NISAやiDeCoの運用方法に悩んだら専門家に相談してみよう

本記事では、NISAとiDeCoについて、双方の違いやどちらがおすすめなのかについて解説した。
NISA・iDeCoどちらも利益の非課税という税制優遇があり、通常の証券口座で運用するよりもお得な制度だ。
ただし、NISAとiDeCoの制度内容は大きく異なる。
NISAは、手数料無料で開設できて自由に出金できるかわりに、所得税や住民税の軽減がない。
一方で、iDeCoは原則60歳まで出金できず口座開設手数料や口座管理料が発生するが、所得税や住民税の軽減(節税)が受けられる。
毎年安定した収入がある人はiDeCoで節税を受けながら運用する手もあるが、そうでない人はNISAから始めるのが無難だ。
老後のために運用すると決めているなら、iDeCoを優先してもいいだろう。
資産運用には必ずリスクがあるため、将来起こるかもしれない暴落などのリスクは想定しておこう。
自分に合う運用商品を見つけられない人は、プロへの相談をおすすめしたい。IFAなら特定の金融機関に所属していないため、中立的なアドバイスや商品提案が期待できる。
専門家によるアドバイスを希望するなら、IFA検索サービスを利用してみよう。