- 70代が新NISAで運用するべき理由を教えてほしい
- 70代が新NISAで運用するときのおすすめ方法を教えてほしい
- 70代は新NISAで毎月いくら積立投資すべきか教えてほしい
人生100年時代と呼ばれている現代、人生のなかで「老後」を過ごす期間はどんどん長くなっており、必要な老後資金も今後ますます増えていくと考えられる。
年金や退職金だけでは老後の生活費をカバーできない場合、貯金額を増やさないことには生活が成り立たなくなる。
そこで考えたいのが、非課税で投資できる「新NISA」を利用した資産運用だ。若い頃から運用できれば良いが、70代になるまで投資をしたことがない方もいるだろう。
そこで本記事では、70代からでも新NISAで資産運用を始めるべき理由や、つみたて投資枠や成長投資枠の概要・おすすめの投資商品、70代が資産運用をする場合の注意点などを解説していく。
70歳は遅い?いまからでも新NISAを始めるべき理由

70代といえば定年退職を迎えて収入源が年金のみになる方もいる。
必要以上のリスクをとって資産を積極的に増やすのではなく、資産が必要以上に減らないように守ることが大切になる。
ただ、人生100年時代と言われて平均寿命もどんどん延びている現代では、現役世代からの貯金が底をついて生活ができない状態にならないようにしなければいけない。
貯蓄を効率的に増やして資産の寿命を伸ばすことも考えるべきだ。
ここでは、70代からでも新NISAを始めるべき理由として、以下の3つを解説する。
理由①老後資金の減りを遅らせるためにも運用が重要
老後に必要な生活費は家庭ごとに異なるが、最低限度の生活でも約23万円、ゆとりある生活には約38万円が必要になるとされている。
資産運用をしないで単純に貯金だけで生活する場合、これらのお金が毎月どんどん減少することになる。
一般的な年金額は夫婦で月23万円程度であり、ゆとりある生活をしていると月10万円以上も資産が減少する可能性がある。
仮に2,000万円の資産があったとしても、10万円ずつ毎月減っていくと、16年8ヶ月で底を突くことになる。
65歳から老後生活をスタートすると81歳で資産が全くのゼロになって生活できなくなる可能性がある。
一方、新NISAを活用して資産運用を続けることで、資産の寿命を伸ばすことが可能だ。
2,000万円を年4%で運用した場合、10万円ずつ貯金を取り崩しても、全てなくなるには「27年1ヶ月」もかかる計算だ。
投資をしない場合に貯金が底を突く16年8ヶ月と比較して10年以上も資産寿命を延ばすことができる。
70代は「資産を守る年代」と解説したが、効率的に資産運用をすることは資産を守ることにつながる。
理由②70代からでも非課税効果を十分に受けられる
新NISAは何歳からでも始められるだけでなく、NISAで投資した投資信託や株式については、売買益や配当益がいつまでも非課税になるメリットがある。
新NISAで投資できる金額は1年あたり、つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円の計360万円。非課税で保有できる限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)だ。
つみたてNISAと一般NISAのいずれかしか選択できなかった旧制度と違い、現在は「つみたて投資枠を利用しながら、余裕があるときは成長投資枠で株式にもスポット投資する」という柔軟な利用ができる。
最高で1,800万円も投資できる枠があるため、ただ貯金していた退職金を運用する先としても利用できる。
また、非課税で運用したあと、受取時に課税されることもなく、引き出しに制限もない。
老後は病気での入院や手術、孫の入学祝いなどまとまった出費が発生するタイミングがあるが、いざというときにも投資資産を売却してすぐに現金化することが可能だ。
いつ始めても非課税の恩恵を受けられること、必要なときはすぐに現金化できることの2点の特徴があることから、70代でも新NISAはおすすめの投資方法といえる。
70代は新NISAのつみたて投資枠から始めよう

70代の人が新NISAを始めるにあたり、まず利用を検討したいのが「つみたて投資枠」だ。
ここでは、つみたて投資枠の制度の概要と、70代がつみたて投資枠を活用するべき理由、70代の方がつみたて投資枠で投資するべき商品の一例を紹介する。
つみたて投資枠とは?制度内容をおさらい
つみたて投資枠は、長期にわたった資産形成を目的とする投資枠のことだ。
投資できる商品は長期の分散・積立に適した、金融庁の基準を満たす「投資信託」「上場投資信託(ETF)」に限定される。
販売手数料が無料で運用中のコストが低いことから長期的な運用に向いているのが特徴だ。
投資できる金額は月に10万円(1年で最大120万円・上限1,800万円)と十分な枠があり、多くの資産を投資・運用することが可能。
70代がつみたて投資枠を活用すべき理由
70代の方がつみたて投資枠を活用すべき理由は、初心者でも少額から始められ、比較的安定した値動きが期待できることだ。
つみたて投資枠の購入方法は積立に限定される。毎月一定額をコツコツと積み立てることで自然と長期的な投資ができ、数百~数千の銘柄で構成された指数(日経平均株価、東証株価指数など)に投資できることから自然と長期・分散投資が実現する。
また、つみたて投資枠では「販売手数料が無料」「信託報酬が一定以下」といった金融庁の基準をクリアした投資信託・ETFに投資できるため、長期保有でもコストを最小限に抑えやすい。
ネット証券では100円から投資できるため、高額を投資することに不安を感じる方でも始めやすいだろう。
70代の方がつみたて投資枠で投資するべき商品の例
つみたて投資枠で投資できる商品は、特定の指数に連動する値動きを目指す「インデックスファンド」が多く、投資先は国内株式、外国株式、国内債券、外国債券などがある。
投資先としては、成長性のある株式の指数に連動している「インデックスファンド」をおすすめする。
つみたて投資枠のラインナップのなかで、以下のような名称の投資信託が候補になるだろう。
- 日経平均インデックスファンド
- S&P500インデックスファンド
- 先進国株式インデックス
- 全世界株式インデックス(オールカントリー) など
投資信託の商品名に「インデックスファンド」という記載がある場合、何らかの指数に連動する値動きを目指している商品である。
構成銘柄は日経平均株価でも225銘柄、S&P500なら米国の500社と数多く、1つの投資信託に投資することで分散投資が可能だ。
なかでも「オールカントリー」とも呼ばれる全世界株式インデックスは文字通り全世界の株式に分散投資ができる。
世界のどの国が成長してもその利益を得ることができるため、長期投資の投資先として人気がある。
70代は新NISAの成長投資枠も併用しよう!

新NISAは金銭的な余裕さえあれば、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用することも可能だ。
70代の方はつみたて投資枠をベースにしつつ、積極的に成長投資枠にも投資をしていきたい。
ここでは、成長投資枠の制度の概要と、70代が成長投資枠を活用するべき理由、70代の方が成長投資枠で投資するべき商品の一例を紹介する。
成長投資枠とは?制度内容をおさらい
成長投資枠とは、成長が見込まれる企業や業界に投資することで、企業価値の拡大や株価の上昇による資産増加を目指すための投資枠だ。
つみたて投資枠で投資できる商品に加え、より高いリターンを見込める個別株式などに投資できるため、積極的に利益を狙いたい方に向いている。
70代が成長投資枠を活用すべき理由
70代が成長投資枠を活用すべき理由は、つみたて投資枠よりも短期間で資産形成ができる可能性があることだ。
成長投資枠では投資信託やETFだけでなく、個別株や不動産投資信託(REIT)も投資対象に含まれる。
個別株は分散が効きにくい分、業績が好調の企業に投資できれば決算を機に短期間で大きく株価が上がる可能性がある。
また、つみたて投資枠の枠にプラスで同じ投資信託に積立投資をすることも可能で、本人のリスク許容度に応じて自由に投資戦略を練ることが可能だ。
70代の方が成長投資枠で投資するべき商品の例
70代の方が成長投資枠で投資するなら、個別株のほかに「インデックスファンド」「アクティブファンド」もおすすめだ。
アクティブファンドとは、ファンドマネージャーが市場や企業のデータを分析したうえで、ベンチマーク(指数・基準)を上回る運用成果を目指す投資信託のこと。
投資商品がファンドマネージャーによって厳選されるので構成銘柄数は少なくなるが、構成銘柄が好調であればインデックスファンドを上回る値上がりも期待できる。
得られる利益額が大きいほど、新NISAの非課税の恩恵も大きくなるだろう。
ただし、アクティブファンドや個別株式はインデックスファンドと比較して投資できる銘柄数が少なく、値動きが大きい傾向にある。
こちらをメインにすると市場動向次第で老後資金が大きく減るリスクがあるため、つみたて投資枠のインデックスファンドを中心に余剰資金で利益を狙うくらいでちょうど良いだろう。
70代は新NISAで毎月いくら積み立てる?

新NISAは上限の1,800万円に達するまで、つみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円(上限1,200万円)まで投資することが可能だ。
では、70代は毎月いくらを積み立てすれば良いのだろうか。
ここでは、70代が毎月投資する金額を決める際の基本的な考え方と、拠出する金額ごとの運用シミュレーションを解説する。
70代の投資は余剰資金の範囲内で行うことが鉄則
大前提として、70代の方が投資する際は投資する金額を余剰資金の範囲内に収めることが鉄則だ。
新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠を合わせて年間360万円、合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)もの枠があるが、無理をして全てを埋める必要はない。
生活費や医療費、介護費用まで投資に振り向けてしまうと、日常生活を送るための資金がなくなってしまう。
毎月10万円、15万円、30万円を投資したときの運用シミュレーション
ここでは「毎月10万円」「毎月15万円」「毎月30万円」を新NISAに投資した場合に資産がどのように増えるのか、資産運用の結果をシミュレーションしてみました。
- 年利は3.0%
- 投資期間は非課税限度額を使い切るまで
毎月10万円を投資した場合
投資金額 | 月10万円(つみたて投資枠) |
---|---|
利益率 | 年3.0% |
投資期間 | 10年 |
10年後の元本 | 1,200万円 |
10年後の含み益 | 197万9,200円 |
投資元本+含み益の合計 | 1,397万9,200円 |
毎月15万円を投資した場合
投資金額 | 月15万円(つみたて投資枠・成長投資枠に7.5万円ずつ) |
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利益率 | 年3.0% |
投資期間 | 10年 |
10年後の元本 | 1,800万円 |
10年後の含み益 | 296万8,800円 |
投資元本+含み益の合計 | 2,096万8,800円 |
毎月30万円を投資した場合
投資金額 | 月30万円(つみたて投資枠に10万円、成長投資枠に20万円) |
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利益率 | 年3.0% |
投資期間 | 5年 |
5年後の元本 | 1,800万円 |
5年後の含み益 | 142万2,100円 |
投資元本+含み益の合計 | 1,942万2,100円 |
70代で投資を始めるなら少額からでも始めることが重要
毎月10~30万円くらいの金額を用意できなくても、少額からでも始めることが70代の資産運用には大切だ。
つみたて投資枠には最小100円から投資することが可能で老後の生活を送りながらでも投資のための余剰資金を確保しやすい。
また、投資ならではの値動きに「慣れる」意味でも少額投資は有効だ。
いきなり多くの金額を投資してしまうと値動きに驚いてしまい、怖くなって短期間で売却してしまうと長期的な資産形成はできない。
投資の値動きに慣れて、長期的に運用するためにも、少額投資で値動きの大きさを知ることが大切だ。
70代が新NISAで運用するときの注意点

70代でも新NISAを利用することで効率良く資産運用・資産形成を進められるのは解説した通りだ。
ただ、メリットばかりではなくデメリットも把握したうえで制度を利用することが大切だ。
ここでは、70代が新NISAで資産運用をするときの注意点として、以下の3つを解説する。
新NISAでは損益通算・繰越控除はできない
新NISAの注意点として「損益通算」や「繰越控除」ができない点が挙げられる。それぞれの制度の概要を説明すると以下のとおり。
例えば課税口座Aで運用している投資信託Xの利益が10万円、課税口座Bで運用している投資信託Yの損失が30万円とする。
損益通算をすることで投資信託Xの10万円の利益は0円になり、税金は発生しない。残った損失分の20万円は翌年以降3年間に得た利益と相殺することができる。
一方、NISA口座で損失が出たとしても、ほかの課税口座と損益通算ができない。
例えば課税口座Aで運用している投資信託Xの利益が10万円、NISA口座Bで運用している投資信託Yの損失が30万円とする。
損益通算ができないため、課税口座の10万円の利益に対して20.315%に当たる「20,315円」の税金がかかる。
NISAではもし損失が出ても損益通算の恩恵を受けることができないため、高リスク商品よりも安定した値動きをする商品に投資することが重要になる。
過度なリスクはとらないようにバランスに注意する
70代から新NISAで資産運用を始める場合、過剰なリスクをとらないようにバランスよく投資することが大切だ。
この場合のリスクは「リターンの変動幅(不確実性)」を指す。
新NISAは定期預金や保険と違って元本保証されていない。お金を引き出す直前に「リーマンショック」「コロナショック」といった、過去の株価の暴落に似た減少がおきた場合、お金を引き出すときに資産価値が暴落しているリスクがある。
日経平均株価に連動する値動きを目指している投資信託「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」の基準価額は2020年2月21日時点で10,350円だったものが、3月17日には7,538円と25%以上の下落になった。
このような暴落はいつ発生するか専門家でも予測することは難しい。個別株式など分散投資が弱い資産に投資すると、さらに大きな暴落になる可能性もある。
70代で資産価値が暴落すると取り返しがつかない可能性もあるため、ご自身のリスク許容度に応じて慎重な運用を検討したい。
リスクを抑えるには、ポートフォリオに「債券」を組み込むことをおすすめする。
例えば投資信託の「eMAXIS Slim 国内債券インデックス」の基準価額は2020年の2月20日に10,307円、3月17日は10,260円と、株式が暴落したタイミングでほぼ下落していない。
リスク許容度に応じて債券を織り交ぜることで資産の値動きが緩やかになり、市場が暴落しても資産の軽減を穏やかにできるだろう。
ただし、債券は株式が好調のときの値上がり幅と比べて、基準価額が大きく上昇しない。
リスクを恐れて債券比率を挙げ過ぎると資産運用の本来の目的が果たせないため、リスクとリターンのバランスを考えることが大切になる。
余剰資金以上の投資で大きな利益を狙わない
70代以上の方が投資する際、余剰資金以上のお金(生活費や医療費など)まで投資することがないように注意が必要だ。
生活費を切り詰めて元手を大きくすれば運用成果も大きくなるが、余剰資金を超えるお金を拠出してしまうと、万が一のトラブルでお金が必要になったときに困ることになるからだ。
NISAは投資している資産をすぐに売却できるが、実際に現金化されたお金を証券口座から出金するには時間がかかる場合がある。
また、万が一のときはすぐに出金できるとはいえ、本来は長期運用して利益を狙う新NISAの商品をすぐ現金化しても大きな利益は望めない。
NISA枠を無理に全て使い切る必要はないので、生活を守りながらコツコツと投資することを意識しよう。
70代が新NISAを始めるときはプロに相談しよう

70代から初めて新NISAに挑戦する方は、口座開設の手続き方法や投資商品の選び方など、さまざまな面で不安に感じることもあるだろう。
新NISAでの資産運用の進め方に迷ったときは、以下のような資産運用のプロフェッショナルへの相談を検討しよう。
- 証券会社
- 銀行
- FP(ファイナンシャルプランナー)
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
証券会社は大手企業が運営していて安心感があるが、初心者の方が相談するのに敷居の高さを感じる可能性がある。
また、銀行は個別株式を取引できないため、株式投資を考えている方は別の相談先のほうが適している。
FP(ファイナンシャルプランナー)は、家計の収支の見直しなどお金に関するさまざまな相談ができるが、保有資格によっては投資に関して個別具体的な銘柄や運用のアドバイスができない。
70代から初めて新NISAでの投資を始める方が気軽に相談するなら、IFAがおすすめだ。
IFAは投資・資産運用に関する専門家であり、金融機関から独立した存在であることから顧客目線に立った中立なアドバイスを受けることが可能だ。
投資は70代でも遅くない!新NISAを活用して始めよう!

70代は労働によって貯金を築くよりも、いまある資産を守りながら生活するフェーズだ。
新NISAを活用して非課税の恩恵を受けながら資産運用をすることは、貯金の目減りを防いで資産寿命をのばしやすいメリットがある。
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があるが、分散投資でリスクを抑えながら投資ができるつみたて投資枠をメインに資産運用を進めよう。
投資する先としては、日本だけでなく世界中の株式に分散投資できる投資信託がおすすめだ。
お金に余裕があるときは成長投資枠で将来性の高い株式に投資することで、将来のリターンの向上を見込むこともできるだろう。
ただし、70代で大きく資産を失うと取り戻すことが難しい。ポートフォリオに値動きが緩やかな債券や債券に投資する投資信託を混ぜることで、リスクとリターンのバランスがとれた投資を心がけよう。
口座開設方法や投資銘柄の選定などに不安があれば、IFA検索サービスを利用して、老後の資産運用に詳しいIFAを探すことをおすすめする。